ケイスケの音響学

言語聴覚士に必要な音響学の解説をします。

音響学の基礎150 過去問㊴

過去問㊴

今回はアンチホルマント(アンチフォルマント)と無関係な音波の性質を探す問題。

 

まずは単語の整理から。

 

ホルマント:音声の周波数スペクトルに現れる、周囲よりも強度が大きい周波数帯域。

音声のスペクトルには、

エネルギーが集中して分布している周波数帯域が5kHzまでの間に4、5か所存在する。

この帯域のことをホルマント、その中心の周波数をホルマント周波数という。

たとえば、男声の日本語五母音の3kHzまでのスペクトルを見た場合、

それぞれのスペクトル包絡の複数のピークをホルマントという。

 

 

アンチホルマント:スペクトル包絡の谷。

ホルマントが共鳴により周囲よりも強度が大きいのに対し、

アンチホルマントは反共鳴により周囲よりも強度が極端に低い。

通常の母音発生時には、鼻咽腔は閉鎖されており、鼻腔に空気が流れることはない。

一方、鼻音(鼻母音や鼻子音など)を発生させるときには、

口腔に加えて鼻腔が声道に加わる。

声道は口腔と鼻腔への分岐が生じるので、

共鳴して強度が大きいホルマントに加えて、

特定の周波数域で音が吸収されるアンチホルマント(反共鳴周波数帯)が生じる。

 

反射:発生した音が障害物に当たり元に戻ってくること。

ある媒質の中を進む波が、他の媒質との境界面にぶつかり、

その一部がもとの媒質中の異なった方向に進む現象。

光・電波・熱・音などが物の表面に当たって、反対の方向に進むこと。

 

干渉:波が重なって振動を強めあったり弱めあったりする現象。

同じ周波数の音を2つのスピーカーから出すと、

音がよく聞こえる場所と聞こえにくい場所ができる。

これは、音の干渉により空気の振動を強めあう所と、弱めう所ができるからである。

 

回折:波が障害物の背後に回り込む現象。

例えば、塀などの障害物があっても反対側の音が聞こえる。

 

共鳴によりホルマントが形成され、反共鳴によりアンチホルマントが形成される。

母音発生時にはホルマントは生じるがアンチホルマントは生じない。

鼻音のように分岐があってアンチホルマントが生じる場合は、

ホルマントの他にアンチホルマントが形成される。

音声のスペクトルに山と谷が存在するとき、

スペクトル包絡の山(ピーク)がホルマント、谷がアンチホルマントと推測される。

 

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