ケイスケの音響学

言語聴覚士に必要な音響学の解説をします。

音響学の基礎148 過去問㊲

過去問㊲

今回は、成人の標準人体模型による裸耳利得が

ピークを示す周波数に最も近いものを選ぶ問題。

 

裸耳利得(オープンイヤーゲイン):

耳の穴から鼓膜に至る外耳道には、

共鳴により特定の周波数の音を増幅する作用がある。

音が鼓膜に届くまでにどれだけ増幅されて届くかが裸耳利得となる。

例えば、3000Hzで耳の外から50dBの音圧を入力して、

鼓膜上で60dBの音圧が測定されれば10dBの利得を得る。

補聴器を装用すると、この利得は失われる。

 

通常の外耳道を2.5cmとして閉管の共鳴を計算すると、

外耳道での基本周波数は3400Hzとなる。

音響学でも一般的に外耳道での基本周波数は、

3000~4000Hzと学習するので4000Hzを選びたくなるが、

国家試験の解答は2000Hzである。

なぜだろうか?

ここから先は私の推測である。

 

成人の外耳道の長さは3~3.5cmと言われている。

今、外耳道の長さを3cmとして閉管の共鳴を計算すると、

基本周波数は約2833Hzとなる。

同様に外耳道の長さを3.5cmとして計算すると、

基本周波数は約2429Hzとなる。

よって、解答は2000Hzとなるのではないだろうか。

 

これについてはテキストには載っていない。

ネットで探して何とか見つけた。

カナル型補聴器と外耳道形態に関する臨床的研究 | CiNii Research

この研究によると、

『裸耳利得では、成人正常耳の周波数のピークは2828Hzで

 最大値16.9±3.7dBが得られる』

と書いてある。

よって、この問題の解答は2000Hzになるのだろう。

 

cafetalk.com